第10話 「不思議なタマゴ売り」

アンとトーマス一家は、新しい町メアリズビルへ向かって雪原に馬車を走らせていました。馬車の上では、ホーレスとエドワードが騒いでいる側で、アンはケイティ・モーリスにこっそりと話しかけていました。バートとジョアンナは新しい家について話し始めます。今度の家は酷く痛んだ状態ですが、たくさんの部屋があって、アンも自分の部屋をもらえることになりました。アンは嬉しさで胸を一杯にし、新しい自分の部屋の窓から見える景色について想いを馳せるのでした。漸く馬車が到着し、真っ先に子供たちが飛び降りて家に向かって走り出していきます。アンも荷降ろしを手伝いながら、自分の部屋の前にやって来ました。期待に胸を弾ませながら開いた扉の向こうには、壊れた椅子と汚れたベッド、そして大きな窓があるだけでしたが、アンの顔は喜びに溢れます。窓からは想像していた湖は見えませんでしたが、アンは2本の大きな木に「双子のルルとベル」と名前を付けて、木の向こうにあるはずの見えない美しい湖の姿を思い浮かべるのでした。アンは部屋の片隅に汚れたマットに気づくと、それを自分の部屋に置くことにします。片付けを終えたジョアンナとバートが子ども達を残して町に出掛けて行く間、アンはそのマットをキッチンから持ってきたブラシできれいに洗い始めました。一生懸命こすっているうちに、きれいになり出したマットに段々と柄が見え始め、アンはますます顔を輝かせます。でもそのブラシは、ジョアンナおばさんが大事にしている野菜洗いのブラシだったのです。帰ってきたジョアンナはブラシを見つけると、アンを厳しく叱ります。翌朝ジョアンナは起きてきたアンに、ブラシをだめにした代わりに町で聞いた変わり者のところに卵を買いに行くよう言い付けるのでした。

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