第32話 「最悪の始まり」

汽車の中、ジョアンナに持たせてくれたかばんをひざに載せてアンは孤児院に向かっていました。アンはかばんから仕舞ってあったささやかな持ち物を取り出します。それはアンが11年の間生きてきたことの証しでした。とうとう着いた孤児院の前で、アンは不安と恐れと拒絶の気持ちで一杯になりながらかばんを握りしめるのでした。廊下ではあちこちの隅から見知らぬ子どもたちがアンを見ています。アンは唇をかみ締めると、院長室で院長のカーライル女史に引き合わされます。院長から威厳に満ちた冷たい顔で見られ、震えるアン。意地になってしまったアンは大人たちから名前を聞かれてもじっと押し黙ったまま答えようとしません。それでも手続きが済まされ、アンは孤児院の生徒になったのです。院長は頑ななアンの態度を気にもせず、淡々と孤児院のルールを告げると人を呼び、アンのたった一つのかばんを取り上げてしまいます。押し黙っていたアンは突然の事態に必死になって抵抗しますが、桜色のリボンや「金色の泉」たちはとうとうアンの手元から引き離されてしまうのでした。教師のミス・ケールに連れられ、少女たちが寝泊りする部屋に連れてこられたアン。広い部屋に粗末なベッドが二十個並んでいる部屋では、5人の女の子たちがじっとアンの方を見ていました。少女たちは興味津々な顔でアンに話しかけて来ますが、その意地悪そうな様子に、アンは意地になって黙りこくったまま一層殻にこもってしまうのでした。

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